インターネットを通じて一定数の顧客を集めることで大幅な割引価格で商品やサービスを購入できる「クーポン共同購入サイト」が注目を集めている。割引率の高さや限定感に加え、交流サイト(SNS)の口コミを生かした話題性が特徴だ。日経産業地域研究所の調査では、紙など従来型のクーポンを使い慣れた人や節約志向の強い人がまず利用していた。
大幅な割引価格が話題のクーポン共同購入サイト(画面はグルーポン)
日本のクーポン共同購入サイトは2010年4月にピクメディア(東京・渋谷)が開始し、“本家”の米グルーポン(シカゴ)も同年8月に日本企業を買収して進出した。すでに100以上のサイトが乱立している。もともと米グルーポンが始めたため「グルーポン系サービス」と総称することもある。
仕組みはこうだ。まず飲食店などが価格や予定販売数を設定し、サイト上で制限時間を設けて発売。会員登録した利用者から時間内に一定の注文が集まれば販売が成立する。割引率は大半が50%以上で、90%前後に上るものもある。サイト運営会社は売買が成立すると、売り上げから一定の手数料を受け取る。
店舗は1エリア当たり1日1件限定の掲載が多い。地域や制限時間が限られ、瞬間的な感覚で売買が成立するため「フラッシュマーケティング」ともいわれる。「前売りの割引チケットを共同で安く、ネット上のクレジット決済などで買う仕組み。(紙媒体やグルメサイトなどを使い、クーポン自体は無料の)日本の従来型クーポンとは全く異なる」。クーポン付きフリーペーパー「ホットペッパー」も運営するリクルートの前澤隆一郎「ポンパレ」編集長はこう解説する。
買い手の消費者には大幅な割引価格で商品やサービスが買える利点がある。参加する店舗・企業にとっては、顧客1人当たりの売り上げは減るが利用日を閑散期に設定して稼働率を上げるなど、全体的な収益向上に寄与する可能性がある。グルーポン・ジャパンの渡辺卓也執行役員は「購入者が事前に一定のお金を払うため、ほぼ確実に来店してもらえることもメリット」という。
期限中に予定販売数に達しないと売買が成立しないこともあるため、購入希望者がツイッターやSNSなどのソーシャルメディアを使って他の人の参加を促すことも多い。これが話題を盛り上げ、PRにつながる効果もある。
日経産業地域研究所が10年11月にインターネット利用者を対象に実施した調査では、12.6%がクーポン共同購入サイトでの購入経験があった(図表1)。「会員登録はしている」人(8.4%)を合わせると2割強だ。年代別では、節約志向が強いとされる30代で割合の高さがやや目立つ。
今回の調査でサイト登録者の生活意識や行動をみたところ、クーポン好きで節約志向が高い点が目立った。グルメサイトの「ぐるなび」やホットペッパーをよく使うという割合も全体平均より高い。従来型クーポンを使い慣れた人が「クーポン」「お得」という言葉に引かれて使い始めた例も多いとみられる。「とにかく安くて経済的なものを買うようにしている」という意識も強い。安く買うためには手間をかけることをいとわない人が、多く利用している傾向もありそうだ。
一方、これらの層を超えた一般的な消費者にどこまで参加者を広げられるかが課題でもある。クーポン共同購入サイトの急増で競合が厳しさを増すなか、利用者の多さが目立つのは「グルーポン」「ポンパレ」「Piku(ピクメディア)」。調査では、購入経験者数が最も多かったのはポンパレ、登録者数ではグルーポンだった(図表2)。購入・登録の合計数の3位には「ぐるなび×Piku」を含めたピクメディアが入った。
購入経験者に、購入した商品・サービスのジャンルを聞いたところ「食品」が73.8%で1位。2位が「外食・グルメ(飲食店)」、3位が「飲料」と食関連が目立った(図表3)。食品はクーポン共同購入サイトでの購入経験が、従来型の各種クーポンよりかなり高いという結果も出た。食品は安価で、買ったクーポンを近くのコンビニやスーパーで使えることなどから「お試し感覚」で買いやすい。飲食店のコース料理に比べ、購入者数の上限を多く設定できることもあろう。
ただ、食品の場合、単なる安売りではメーカーや店にメリットはなく、参加の継続も見込みにくい。サイト運営面でも注文が殺到するリスクがある。食品の安売りを通して来店を誘い、他の商品やサービスの購入につなげるような工夫ができるかが今後のカギだろう。