【カイロ=花房良祐】エジプトでは30日、29年にわたり統治するムバラク大統領に退陣を求めるデモが6日目も続いた。首都カイロでは商店や銀行が休業し、住宅や商店を狙う略奪行為が続くなど首都機能がマヒしつつある。大統領は政権幹部の刷新に続き、軍を前面に出す形で収拾を探っているが、混乱は長期化の様相を見せている。
略奪に遭ったカイロ市内の店を片付ける労働者(30日)=AP
カイロの中心部では同日午後から市民が再び集まり、中東の衛星テレビ局アルアラビーヤによると、約1万人が抗議デモを開いた。タンタウィ国防相が現場を訪れて参加者と対話する一方、戦闘機数機が低空で飛び、軍事力を誇示してデモに圧力を加えた。
ムバラク大統領は30日、新たに就任したスレイマン副大統領や国防相らと対応を協議。国防相は軍にデモ参加者が暴徒化した場合は鎮圧するよう命令したが、抗議は北部アレクサンドリアや東部スエズ、イスマイリアでも発生している。ロイター通信によると、29日までに死者は全土で100人に達した。
カイロではデモや午後4時以降の外出禁止令のために多くの商店や銀行が休業し、少ない営業中の店に市民が集中している。ガソリンの不足も表面化しつつある。エジプト証券取引所は30日に続いて31日も休場を決めるなど、経済活動への影響が拡大している。
カイロでは28日の軍部隊の展開後、警察は姿を消しており、29日夜から30日にかけ商店などへの略奪が横行。自警団を組織する動きも出ている。
何千ものエジプト人が警官隊との衝突による犠牲者を追悼した(30日、カイロ)=AP
一方、エジプト政府は同日、カタールの衛星テレビ局にエジプトからの報道をやめるよう命令した。報道内容が扇情的と判断したとみられる。の遮断に続き、情報統制を強めている。
エジプトはアラブ最大の人口を有する地域大国で、外交上もパレスチナ和平交渉の仲介など重要な役割を担う。欧米やアラブ各国は情勢を注視しており、ペルシャ湾岸諸国で構成する(GCC)は30日、「エジプト情勢の安定を望む」との声明を発表した。