100円ショップ大繁盛、FRB議長のジレンマ(NY特急便)
米州総局 小高航
27日のダウ工業株30種平均は2日続伸し、約2年11カ月ぶりの高値で終えた。
高止まりする失業率、物価高が消費を冷やす懸念、住宅部門の回復の遅れ――。この日の株式市場は、バーナンキ米連邦準備理事会()議長が会見で景気回復の鈍さを指摘すればするほど、「金融引き締めはまだ先」との判断から株価が上がる展開となった。
ただ、株価上昇に沸く株式市場とは裏腹に、議長の悩みは深そうだ。米個人消費の現場を歩くと、議長が抱えるジレンマが凝縮されている。
ニューヨーク郊外にあるファミリー・ダラーの店舗。日本でいう「100円ショップ」の米国版だ。テニスコート2面分ほどと米国では小ぶりな店内には、生活雑貨や洋服、食品が所狭しと並ぶ。日本と違い1ドル以上する商品も多いが、ひっきりなしに客が訪れ、レジは行列が絶えない。
自動車のエンジンオイル3ドル(約250円)、12色の色鉛筆1ドル――。安さに驚く商品が並ぶ中で、特に目を引いたのがティッシュペーパー。有名ブランド「クリネックス」が1箱2ドル。その隣には、ファミリー社の自社ブランド品が半額の1ドルで売られている。商品の山は当然、「自社ブランド品」の方が減っている。
クリネックスを製造するキンバリー・クラークは今週、原材料価格の高騰に耐え切れず、ほぼ全商品を値上げすると発表した。米国ではコスト増を補うための値上げが相次いでいるが、高失業率やガソリン高が続くなか、顧客離れを招きかねない大きな賭けだ。
半面、ファミリー社は金融危機の2008年以降、8四半期連続で利益を10%以上伸ばし続けている。各種の指標で、米消費者心理は改善が続く。ただ、格安店の代表格であるウォルマートですら不振に苦しむなかでの「100円ショップ」の繁盛は、消費者の不安が根強く残ることを示す。
「ガソリン高や物価上昇など、消費者のストレスは日増しに強まっている」。26日にニューヨークで講演したファミリー社のレビン最高経営責任者(CEO)は、「消費者のストレス」が好調の要因だという。
FRBの6000億ドル規模の購入による量的緩和が、景気後退懸念を抑え、株価上昇によるで富裕層の消費拡大に寄与したのは事実。半面、大量に供給された資金が資源高やドル安を招き、足元の物価上昇につながっている。消費者のストレスは、バーナンキ議長が駆使する金融政策の恩恵が、すそ野まで広がっていないことを示す。
米量的緩和、6月末で終了 FOMC決定
ゼロ金利は維持
- 2011/4/28 1:38
【ワシントン=御調昌邦】米連邦準備理事会(FRB)は27日開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的緩和の第2弾(QE2)として実施してきた米国債の買い入れ策について、6月末で予定通り終了することを決定した。事実上のゼロ金利政策の維持も決めた。米経済については緩やかな景気回復を確認しつつ、原油高の影響などを慎重に見極める方針だ。
FRBは米国債の買い入れについて6月末で終了する意向を示していたが、今回の会合で委員会の立場を明確にした。最重要の政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は現行の年0~0.25%で据え置いた。政策金利は「今後も長期間、異例の低水準とすることが正当化される可能性が高い」との表現も維持した。
米経済の先行きに不透明感が出ていることもあり、今後も緩和的な金融政策で米経済を下支えすると見方が多い。ただFRB内の一部には、物価上昇などを懸念する声があり、今後「出口戦略」について議論が高まる可能性がある。声明ではFRBの保有資産などについて、今後調整する用意ができているとの認識を示した。
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C9381959FE0E5E2E5E48DE0E5E2E6E0E2E3E39F9FEAE2E2E2
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